福島市で年明けの2日から3日にかけ、放射性セシウム134と137の降下量が急増した。ここ数カ月の1平方メートル当たりの検出量は検出限界値未満(ND)や二桁までの数値ばかりだったのに、137の場合は252ベクレルを記録。測定した福島県原子力センター福島支所は「特に問題がある数値とは考えていない」としているが、一体何が起きているのか。(上田千秋)
正月早々に測定されたセシウムの高い値は、地元住民に衝撃を与えた。
「最初に聞いた時はびっくりした」と打ち明けるのは、「渡利の子どもたちを守る会」の菅野吉広代表だ。同市渡利地区は周辺に比べて、放射線量が高く、除染などが進められている。
セシウムの降下物は、市街地の同支所で1日1回、午前9時までの24時間分を計測する。
半減期2年の134は昨年12月29日に5.36ベクレルだったが、30日に35.7ベクレルに上昇。今月1日に下がり、2日にND(5.95ベクレル)になった後、3日に180ベクレルに上がった。
同30年の137も似たような数値で推移し、3日には252ベクレルにまで跳ね上がった。その後は134、137とも数十ベクレル台にとどまっている。
同支所によると、これまでの最高値は134が592ベクレル(昨年7月20日)、137が790ベクレル(同3月28日)だ。
原因は何か。同市では2日夜から3日未明、弱い雨や雪が降っていた。これまでも強い風や降雨時にセシウムの降下量が増える傾向にあった。
同支所の担当者は「直近だけではなく一定の期間で考えれば減少傾向に変わりはなく、風向きや雨などの状況次第でこのぐらいの数値が出ることはあり得る」と話す。
だが、その値は直近の数倍から最大30倍程度も急増している。新たな福島第一原発の由来も?と気になるが、ヨウ素の測定値はNDが続く。
元原子力研究所研究主幹で、社会技術システム安全研究所(茨城県ひたちなか市)の田辺文也所長は「事故炉の内部で何か起きたのなら敷地内の放射線量が上がるはずだが、それはない。落ち葉に付着していたセシウムが風で舞い上がるなどして落ち、採取されたのでは」とみる。
前出の菅野さんによると、福島県浜通りなどで震度4の地震があった1日、東京電力が「4号機の使用済み燃料プールの循環冷却に使っている配管から水漏れが起きている可能性」を発表したことも混乱に拍車をかけた。後に外部への水漏れはなかったとお判明したが、「このトラブルと関連づけて、『また逃げなきゃいけないのか』と言う人までいた」という。
田辺所長も「溶けた核燃料の大半が格納容器内に落ちている。大量の放射性物質が放出されたメカニズムも分かっておらず、とても『収束』と言える状態ではない。住民は引き続き警戒する必要がある」と訴える。
風で舞い、雨・雪に付着?「速報体制必要」
原因が舞い上がりセシウムとみられることについて、菅野さんは「市が情報を伝えるわけでもないし、大半の市民は高い数値が出ていたのを知らなかったのでは。分かっていれば外出時に子どもにマスクを着けさせるなどの対策も取れたはず」とし、こう提言した。
「今後また、数値が上がることも考えられる。地元のテレビで緊急速報を流すシステムなどを考えるなど、県や市は何らかの対応を取る必要があるのではないか」
(c)東京新聞 平成24年1月13日

