川崎市の臨海部にある東芝の原子力研究施設「東芝原子力技術研究所」の実験用原子炉が、28日にも運転を再開することが決まった。同社から通告を受けた川崎市が25日、発表した。実験炉は3月4日から運転を停止しており、東日本大震災時は稼働していなかった。
東芝によると、震災発生後の3月11~12日に施設を点検し、原子炉などに異常がないことを文部科学省と川崎市に連絡。その後も同省の定期検査を受け今月18日に合格証を得たという。
この実験炉は民間が持つ国内唯一の臨界実験装置。1963年に運転を開始し、最大熱出力200ワット。研究用なので、発電装置はない。例年、60日前後稼働させている。
福島第一原発事故で脱原発の世論が高まる中での運転再開となるが、同社広報室は「事故などで損傷した原子炉の炉心管理技術の開発など、研究のニーズがある。大学生を招いた実験の予定もある」と強調した。
通告を受けた市は24日、事故発生時の連絡体制の整備などを求める阿部孝夫市長名の要望書を同研究所に提出した。
「古い炉は危険」「不安」 実験用炉再稼働 川崎市民 厳しい目
東芝が持つ臨界実験炉の再稼働が決まった。炉がある東芝原子力技術研究所(川崎市川崎区)をめぐっては、福島第一原発の事故後、原子炉の安全性について市民から問い合わせが多数寄せられていた。世論を配慮しての市への事前通告だったが、脱原発ムードの中の運転再開には、市民から厳しい目を向けられそうだ。
川崎市は、5月に同研究所に立ち入り検査し、原子炉などに損傷がないことを確認。再稼働にあたって市に報告するように要請していた。今回の東芝側から市への通告に法的根拠はない。
市から東芝側に出した要望書では、施設の情報公開や安全対策の向上、事故時の連絡体制の整備を求めたが、法的な強制力はない。市危機管理室は「できる限りのことをしている状況だ」としている。
市民からが再稼働を不安視する声が相次いでいる。
実験炉の古さを心配する、同市宮前区の会社員松本敏明さん(44)は「商用原発の寿命が30年。実験炉でも、それを超えた炉を動かすことは危険を伴う」と指摘する。「廃炉工程のシミュレーションなら、東海第一原発や浜岡原発で進行中なので不要。動かさずに炉を解体するのが、福島第一原発建設に関わった東芝が国民感情を逆なでしない手段だ」と語った。
市民グループ「新しい川崎を作る市民の会」事務局の崔勝久さん(65)=幸区=は、同研究所を対象として緊急事態の対策拠点(オフサイトセンター)があることに触れ、「実験炉の熱出力が低く、たいしたことないともいわれるが、万一の時は住民の避難を指示する体制まで完備している。どう受け止めればよいか」と不安を口にした。
運転再開炉のEPZは100m
運転再開が発表された東芝の研究用実験炉は発電をせず、福島第一原発で最も小さい1号機6900分の1しか熱出力がない研究炉だ。だが、それでも周囲100mは、防災対策の重点区域(EPZ)とされており、、事業者は県や市と協議して、地域防災計画を策定しなくてはならない。
原子力安全委員会の防災指針は、原発や出力5万キロワットを超える研究炉について、EPZを8~10キロ圏と規定。その他の研究炉では、出力に応じ1500メートル(5万キロワット以下)、500メートル(1万キロワット以下)、100メートル(100キロワット以下)、50メートル(1キロワット以下)となっている。東芝の研究炉は設定された経緯は不明だが、個別に100メートルと定められている。
EPZは、福島第一原発の事故を受け、緊急防護措置区域(UPZ)として約30キロ圏に拡大されることになった。小規模の研究炉などは見直しの対象外で、周辺住民らから見直しを求める声が高まる可能性もある。
研究炉などのEPZ見直しについて、安全委の担当者は「今後、検討する必要性はある」と話している。
(c)東京新聞 平成23年11月26日 朝刊

