福島第一原発事故で飛散した放射性物質の除染基準を設けている関東地方の153区市のうちの約35%が、環境省の除染基準「地表から50センチ~1メートルで毎時0.23マイクロシーベルト」よりも基準を厳しくしていることが、本誌が1都6県の全区市に行った取材で分かった。子どもへの影響や住民の不安に配慮するためで、自治体の担当者からは「住民の理解が得られず、環境省の基準は使えない」との声が上がる。
16市が基準を毎時0.19~0.223マイクロシーベルトに設定。37区市が毎時0.23~0.59マイクロシーベルトだが、測定する高さを「地表面」「地上5センチ」など下げて事実上、同省よりも厳しい設定にしている。
「今更基準を緩めるわけにいかない」。埼玉県桶川市の担当者がこぼす。同市は6月から、年間の被ばく限度を1ミリシーベルトとして「地表面で毎時0.19マイクロシーベルト」の基準を設け、除染を進めてきた。関東地方の自治体では最も厳しい基準だ。
10月に環境省が除染対策特措法に基づく除染の助成対象を、「毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域」としたため、市が基準の変更を検討。しかし、市民に安心してもらうため変更を見送った。
線量を測定する地点の高さを環境省よりも低くしている東京都港区は「子どもへの影響を考え、地上5センチに設定した」。埼玉県上尾市は「市民の要望で地上1センチでも測定している」と話す。
放射線量は土壌から離れるほど低減することも理由の一つだ。同省基準の地表50センチ~1メートルでは毎時0.23マイクロシーベルト未満の線量しか検出されない地域も多い。地表付近で測定しいてる神奈川県の市の担当者は「環境省の基準にできれば楽なんですが」と苦笑。別の市の担当者も「国の基準では住民の安心につながらない。現場を持つ自治体とは温度差を感じる」。
群馬県高崎市ではこれまで、地上1メートルで0.23マイクロシーベルトを超えた地点がなかったことから、測定する地点を最近、地表面に変更した。
国の助成を受けようと、除染基準を環境省に合わせて緩くする動きも出てきている。
毎時0.19マイクロシーベルトを基準としてきた千葉県野田市は、助成を受けられる重点調査地域の指定を申請する方針を決め、毎時0.23マイクロシーベルトに基準を変更した。担当者は「支援は受けたいが、住民の安心感も大事。(基準変更は)相当悩んだ」と明かす。
ただし、同市は、市民の不安を和らげるため測定地点を地上5センチに下げており、地上50センチ~1メートルを基準とする環境省から助成を受けられるかは不透明だ。
環境省は「地表付近での測定を否定はしないが、空間放射線量を正しく把握する上で50センチ~1メートルの測定高は妥当と考えている」と説明している。
東京電力福島第一原発事故で、首都圏にも北関東を中心に放射性物質が飛来・蓄積し、”放射能汚染”は今や誰にも身近な問題になった。首都圏全区市(原子力関連施設がある茨城県東海村、大洗町を含む)の除染対象の現状(1日現在)をまとめた。
基準値の根拠で多かったのは放射性物質の除染に関する国の基本方針と、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告。文部科学省が学校での除染目安や、局所的に放射線量が高い「ホットスポット」の対応ガイドラインで示した基準を参考にしたところもある。
他のケースでは、横浜市は年間被ばく限度量を1ミリシーベルトとして、「学校校庭で1日8時間、210日過ごす」との仮定で線量を独自に計算。千葉県我孫子市は学校、公園での線量測定の平均値を採用した。栃木県那須市は実際に試験駆除を行い、どこまで線量を下げられるかを見極めて決めた。
独自の基準としては数値を設定、公表していない自治体も無策ではない。「保育園、幼稚園、小学校では0.19マイクロシーベルトを目安に対応」(茨城県守谷市)、「学校については希望があれば除染」(栃木県大田原市)など。実態として国の方針に沿って対応している自治体も多い。
東京都の多摩地域の一部の市や、神奈川県大和市のように「検討中」という自治体も。国の方針がほぼ固まったことから、今後、新たに基準を設けるところも増えそうだ。
(c)平成23年12月4日 朝刊


