横浜市港北区の港北土木事務所近くの路上脇の雨水弁。今月中旬、近くに住む教員の男性(38)が線量計を升の付近に置いて計測した放射線量は毎時0.02マイクロシーベルト。全く問題ない値だった。
9月、横浜市は同じ場所にたまっていた土砂などから約3万9000ベクレルの高濃度の放射性セシウムを検出し、同0.91マイクロシーベルトと、比較的高い放射線量を計測したと発表した。市の検査は、男性の通報が発端だった。男性は、この場所と自宅マンション屋上などの放射線量を測り、堆積物を市内の民間検査機関に持ち込み、検査結果を市に伝えたのだ。
市はそれまで、学校の校庭で空間放射線量を測っていたが、対応にきめ細かさを欠き、保護者から不満が出ていた。「小学校の給食で放射能汚染された可能性のある牛肉が提供され、保護者が対応を訴えても、役所が動かないのを見て歯がゆかった」と、男性は振り返った。
男性の通報で、市は学校など子どもが集まる施設で放射線測定と除染作業を本格的に開始。小中学校18校で市が除染の目安にしている同0.59マイクロシーベルトを超える線量が検出され、除染された。
福島第一原発の事故後、男性は毎日、線量計を持ち歩いている。長女(4つ)、10月に誕生した次女を少しでも放射線量の低い場所で遊ばせたいという思いからだ。ただ、検査費用の負担は大きい。線量計2台を約20万円で購入し、長女の尿検査に3万円を使った。堆積物の検査は1検体で最大8万円だ。
男性が検査機関に持ち込んだ堆積物からは、体内の取り込まれると白血病の原因になる放射性ストロンチウムも検出された。再検査した国は「原発事故が由来とは言えない」としたが、市は国に市内のストロンチウムの検査を求めている。
しかし、男性は「役所は率先して対策を取ろうとはしない。牛乳や魚など食品のストロンチウムも検査せず、子どもを守っていない」と不満を口にする。今後は都内の団体と協力し、食品検査に力を入れていくという。
私たちは3月11日以降、放射性物質の拡散に悩み、これからも悩むだろう。だが、安全や安心を確保するため、行政を動かしてきたのは、市民の力だったことは確かだ。市民の声を待つまでもなく、先手を打てる繊細さを行政に望みたい。(荒井六貴)

