福島第一原発事故後の食品や環境の放射能汚染を測っている団体が「全国市民放射能測定所ネットワーク(仮称)」をつくり、19日に東京都内で初会合を開いた。測定所の運営態勢について意見交換し、高い数値が出た場合の多重チェック、研究者との連携などの提案が相次いだ。
測定所ネットは、専門性が高い放射線測定の方法や検査データの共有を目的に昨年10月、父母らでつくる約300団体が加盟する「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」の集会で、福島県の市民測定所「CRMS」が提案した。
メーリングリストで、北海道から福岡県までの約160人が、測定器選びや測り方のコツを話し合ってきた。
初会合には、福島県や首都圏など9都県で測定所を運営したり、開設準備中の約30団体の約50人が参加した。
測定の技術をめぐり「放射能は同じ検体を測るたびに数値がゆらぐので、どう見たらいいか」「測定器の汚染を防ぐ方法は」などと、放射能測定に独特な課題が出された。
測定を希望する人のため、全国の測定所の場所が分かる地図を作るアイデアも出た。「測定依頼者にデータを説明するため、内部被ばくに関する学習が必要」「放射線の測定には限界があることを理解していただかなくては」といった意見もあった。今後、データを共有した場合の公開の仕方などが課題となりそうだ。
CRMSの丸森あや理事長は「測ることがもくてきではなく、例えば福島ならどうやって保護するかなど、その先にあるものを忘れないようにしたい。定期的に情報交換してレベルアップし、息の長い助け合いの場に」と話した。
内輪から外へ進もう 線量どう監視 活発に情報交換
首都圏などで測定所を開き、インターネットでつながった人たちが、初めて一堂に会した「全国市民放射能測定所ネットワーク(仮称)」の初会合。福島第一原発事故後にできた父母の団体や、チェルノブイリ原発事故当時から取り組む団体など立場や経験はさまざまだが、「行政に任せきりにできない」という思いは共通する。放射線測定技術の高い専門性の壁を乗り越えようと、活発に意見を交わした。(橋本誠、加藤益丈、星野恵一)
「今までは内輪のつながりでしたが、外に見せていく段階に入った。皆さんと課題を共有できれば」
測定所ネットの設立を呼び掛けてきた東京都国分寺市の「こどもみらい測定所」の石丸偉丈代表(39)が、各地の市民測定所が記された日本地図を指して話した。同ネットに参加していない団体や準備中の所を含めると約80ヵ所あるという。
15歳の娘がいるウェブサイト制作者。行政の測定に不信感を抱き活動を始めた。初めは、これ以上は測れない数値と言う意味合いの「検出限界」も知らなかった。測定器の性能や測定時間などで誤差が出る放射線測定。原発事故の直後から活動する市民測定所「CRMS」を訪ね、検体の詰め方やデータの読み方を教わった。
昨年12月に自ら測定所を開設後、牛乳から1キログラム当たり数ベクレルの放射性セシウムを検出したときは、より精密な測定器を持つグループで裏付けを取るなど相互チェックに力を入れた。「測定所の連携がなければ難しかった」
福島、二本松市など福島県内9ヵ所と世田谷区で活動するCRMS。福島市から参加した阿部浩美さん(42)は「原発事故後の行政対応は後手後手。民間の機動力を生かしたい」。同市出身で20年間、都内で暮らし、大震災後に地元に戻って活動に加わった。
グループ討論では「運営費はどのくらいかかるのか」「赤字にならないのか」などと、市民活動にとって切実な質問も。阿部さんは「民間企業の支援やカンパの測定料金で運営しているが、今後、どう継続していくかが課題」と話した。
参加者からは「汚染度の高い検査結果なら『食べないで』と言えるが、20ベクレルくらいの時、どう説明するのかが難しい」との声も。CRMS理事長で小学4年生の男児(10)の母である世田谷区の丸森あやさん(44)は「小さなベクレル数でも情報提供し、数値の意味を皆で考えたい」と話した。
新たに測定所を立ち上げる団体にとって、会合は先駆者と情報交換する絶好の機会だ。
3月に開設が迫った横浜市民測定所の女性(41)は「測定所の信頼を高めるには正確な測定が前提。検査の仕方に工夫がいる」と他の参加者の経験談に耳を傾けた。開設に動き出した埼玉県飯能市の大久保恒治さん(64)は「まだ測定器を選んでいる段階。安くても信頼性の低いのを買っては無駄」と、情報収集に余念がなかった。
(c)東京新聞 平成24年2月20日

