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放射能汚染

森ゆうこ文科副大臣 ウクライナ出張報告・木村真三・獨協医科大学准教授の提言

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(民主党原発事故収束対策PT第3回総会) 

ウクライナ出張報告

平成23年11月2日
文部科学副大臣
森ゆうこ

1.  行程

10月16日(日)
日本発、キエフ着

10月17日(月)
放射線医療研究センター・ステパノワ教授との会談と小児病棟視察
第177バイオギムナジウム視察
教育科学スポーツ青年省タバチニク大臣との会談
保健省アニシェンコ大臣との会談
国立戦略研究所ナスビット主任研究員等との会談

10月18日(火)
チェルノブイリ原子力発電所30km圏内等視察
ナロージチ町長、地区病院長との会談

10月19日(水)
非常事態省チェルノブイリ立入禁止区域管理庁ホローシャ長官との会談
ウクライナ医学アカデミー・コンディーエフ副総裁等との会談
キエフ発

10月20日(木)
日本着

2. 随行者

行松泰弘
科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(原子力災害対策支援本部兼務)
永田充生
科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室放射線安全企画官(原子力災害対策支援本部兼務)(医師)
吉田光成
森副大臣秘書官事務取扱
後藤孝也
放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター 被ばく医療部主任研究員(医師)

なお、17日夕刻から木村真三・獨協医科大学准教授が同行した。

3. 会談等結果概要

【教育関連】

[1]教育科学スポーツ青年省 タバチニク大臣

・ウクライナ側から政府間の教育協力協定の締結について提案があったが、日本側から両省間の覚書の作成を提案。覚書の作成に向けて事務的な折衝を開始することで意見が一致。

・我が方より2020年のオリンピック招致への協力について依頼したところ、ウクライナ側から外務省及び国内オリンピック委員会への働きかけを行うとの反応。

[2]キエフ市第177ギムナジウム(バイオ特別学校)
・給食については、子供によっては3食とも学校給食を食べることもあるので、子供の健康維持という観点から国が関与している。具体的には2週間分の献立を保健省で決めて、クリーンな食品を提供できるというサーティフィケートを有する企業から食材を調達している
・放射線教育についても、放射線の影響を避けるために何を食べるか、何を植えるか、事故が起こったときはどう行動すればよいか、を実践的に教えている。(放射線教育に関する授業のデモンストレーションを視察した)

【チェルノブイリ事故対策関連】

[1]非常事態省チェルノブイリ立入禁止区域管理庁 ホローシャ長官
90年代に入ってから土壌の汚染密度を基準に移住等を判断することになった。これは詳細な放射線量率測定を行う機材不足もあり、事故直後から作成されてきたセシウムの土壌の放射線濃度マップによって決めたが結果的には、極めてコンサバティブで、避難移住地域を過大に広げてしまったという点で誤りだった。避難移住は線量率を基準にすべきである。農作物の危険性については別途土壌の汚染密度により判断すればよいが、地方によっては農業が人々の生計のみならず食糧供給も支えていることも多い。
政府の住民に対するコミュニケーションの失敗により、住民は放射線恐怖症に陥った。これが住民に与えたストレスは大きく、国民の人気取りを狙う人々に翻弄されることになった。住民にじっくり説明すべきであるが、住民は遠くに住んでいる者の説明を信用しない傾向があるので、まず理解のある地元関係者の協力を得る必要がある。
・ウクライナが食品中の放射能基準値を低く抑えているのは、森の産物など、国民が汚染された食べ物を口にしやすい環境にあるためである。
事故直後は混乱の中で、住民の被ばく線量を正しく評価することが困難であったが、がん及びがん以外の様々な疾病の増加を見ると、被ばく線量が過小評価されている可能性もある。
・(移住の基準についてはどうあるべきか、と問うたところ)、生涯35レム(350ミリシーベルト)を生涯70年間と仮定して年平均にならすと5ミリシーベルトが一つの目安であり、チェルノブイリではこのような考え方に立っている。ただし、これはあくまで平均ということであって、スタートは5ミリシーベルトより高くなるであろう。

[2]保健省 アニシェンコ大臣
・住民の健康管理の基礎となる台帳を作り、継続的に検診等を行っている。
・様々な専門家が様々な発言を行い混乱した。このため、放射線医療に関する専門機関を設立し、その専門家の勧告に従って施策を実施している。
・チェルノブイリに関する補償は法律で定めており、被災者一般への補償に加えて、子供に清浄な食品を与えるための補償もある。

[3]ウクライナ医学アカデミー コンディーエフ副総裁
汚染地域の住民にクリーンな食べ物を提供すること、食べ物を通した被ばくを把握することもまた、極めて重要である。
・汚染地域では、免疫低下、心臓疾患等、さまざまな異常が報告されているが、放射線との関連はわからない。自分としては、放射線に加えて、ストレス、化学・重金属汚染等複合的な影響があると見ている
・汚染地域から避難した人と避難せず汚染地域にとどまった人のその後を追った調査があるが、避難した人の方が死亡率も疾病率も高かった。対策によっては、大きなストレスや精神的なダメージを与え、却ってマイナスになることを物語るもの(後述するナスビット氏、ナロージチ関係者も同趣旨述べていた)
常に真実を住民に伝えることが基本であり、最も重要

[4]放射線医学研究センター プリジャジニク・がん疫学研究室長
がんに関する限り、年間20ミリシーベルトという日本の避難基準は、妥当なものと考える
・チェルノブイリで小児甲状腺がんの増加が確認されたのは事故後4年後経った1990年であり、福島においてもヨウ素を多く被ばくした子どもたちの健康管理には十分注意を要するべきである。

[5]ステパノワ・放射線医学研究センター放射線小児・先天・遺伝研究室長
・チェルノブイリ事故後の影響については、専門家間のコンセンサスが得られている点、専門家の間でも正反対といっていい程の見解の相違がある点がある。その意味では、よく分かっていない部分も多い。
・自分としては、これまで5万人の子どもを検診してきた経験を通じて、国際的にもコンセンサスが得られている甲状腺がん以外にも、事故は子どもたちの健康全般に影響を与えていると考えている。特に、呼吸器系、消化器系、心臓血管系、免疫系等への影響であるが、当初は病気でないレベルの変化が起こり、2~3年後に病気に移行する例を多く見てきた。
高いレベルの放射性ヨウ素にさらされた子どもたちはハイリスクであると考えられ、長期の健康観察が必要である。我々の調査においても、事故当初に被ばくした18歳以下の子どもたちにおける甲状腺がんの患者数は減少しているが、新しく発症する者も一定数いる。そのため、長期継続的な健康観察が必要である。ウクライナでは、登録制による健康管理を行っており、半年に1回検診を実施している。また年2回の長期休暇に保養地に送る等の措置を行ってきた。
・チェルノブイリ事故時に母親の胎内で被ばくした子どもたちでは、成長障害、リンパ球の染色体異常、免疫障害、甲状腺機能障害等の悪影響が見られ、また、汚染地域に残った子どもたちの全身的な健康状態は良くない
クリーンな食品を子どもたちに食べさせることで生涯の被ばくをかなり抑制できる。また、がん以外の病気の影響を調べるために、大規模な疫学的追跡調査が必要。

[6]ウクライナ科学アカデミー数理機械システム研究所 ジェレズニャク・環境モデル研究部長
・事故の影響は、本当の放射線の影響と、心理的な面での影響がある。キエフではわずかな放射線の影響でもパニックに陥った。事故の影響としては放射線の問題より心理的なものの方が大きい。いろいろな病気の原因をすべてチェルノブイリ事故と結び付けて考えるのは誤ったアプローチである。
食品の基準については、地域ごとの特性に応じて考えるべきである。ストロンチウム、セシウムは20年たった今でも土壌から食物への移行が見られる。

[7]大統領府付属国立戦略研究所環境技術安全部 ナスビット主席研究員
・国際機関の報告書は、報告書の内容が報告のサマリーに正確に反映されていると言い難い場合があり、注意を要する。
・元々、ウクライナ東部については公害の影響、南部については、有害な肥料を使った農作物の影響によりがんの発生率が高かったのであるが、疫学調査の中には、チェルノブイリ事故による汚染地域のがん発生率がこれらの地域より低いことを示しているものもある
・ジトミール州(後述のナロージチ地区もこの州)はもともと自然放射線レベルが高い地域であり、チェルノブイリ事故により上乗せされた放射線より、もとからの自然放射線の方が高い。
食品の安全基準については、内部被ばくがどの程度あるかが重要であって、地域ごとの違いや、大人と子どもといった差を考慮する必要

[8]ウクライナ医学アカデミー衛生・医学生態研究所 ティムチェンコ・遺伝・疫学研究室長
・口唇裂(兎唇)、自然流産、不妊等について、台帳を作って追いかけてきたが、汚染地域において先天的奇形の子どもが生まれる確率は非汚染地域の1.5倍あることがわかった。原因としては、低線量の放射線影響以外に、喫煙や化学物質が考えられ、さらなる見極めが必要である。
放射線の影響を受けた子どもはできるだけ良い環境で暮らせるような配慮が必要である。2ミリシーベルトならよいとか1ミリシーベルトならよいというものではない。

[9]ナロージチ町長、地区病院長等地区関係者
事故直後は、子どもたちには給食として3食とも地域外から調達した食料を与えた。現在、子どもは検診で体内セシウム量が基準値を超えると、日常ためている食料品のチェックが行われることとなっている。
子どもたちは年2回の長期休暇(夏季3ヶ月、冬季1ヶ月)の際に学校単位で保養地に送られた。(現在は年1回に減り、参加者は約半数程度)。
・毎年検診を受けさせているが、この地域の子どもには、免疫力の低下、甲状腺障害、消化器系障害等が多く見られる。大人も心臓疾患をはじめ健康不調を訴えるものが多い。
・被災者の方々に、生きることについて希望を与え、自立して生きていけるような支援を行うべきである・

4. まとめと出張者所見
・関係者が一致して述べていたのは、内部被ばく低減のためクリーンな食料を与えることの重要性である。このため、少なくとも給食に関しては、食材の事前検査等の体制を整える必要。また、環境放射能水準調査のモニタリングを復活させることも有効。
・チェルノブイリ原発事故による放射能の影響として国際機関が一致して認めているのは子どもの甲状腺がんの増加であるが、ウクライナ政府報告書や現地医療関係者は、免疫機能低下、心臓疾患等の患者の増加を指摘している。放射線のほか、ストレス、化学・重金属汚染等が疑われ、今後の疫学的な分析が待たれる。
我が国の今後の対策に生かすために、世界に先んじてチェルノブイリ事故の影響に関する最新の知見を積極的に収集する必要があり、現地行政、研究機関、さらには国際的な研究グループとの研究協力の一層の強化が必要(但し、現地公的機関は、補償による国家財政負担の軽減を指向しがちであることに注意を要する

・また、放射線に対する恐怖感がもたらす心理的影響や移住がもたらすストレスが心身に与えるダメージの大きさを過小評価すべきでない、という点も関係者が一致して述べていた。
今後は、放射線に対する過度の恐怖感の除去やストレスの軽減につながる環境作りに向けて、地元住民に対するメンタル面でのケア、適切なリスクコミュニケーション活動の推進が重要で、そのためにも政府の信頼回復が急務である。また、避難や移住を措置する際には、ストレス軽減のため、家庭や地域コミュニティーがバラバラにならないような配慮が必要である。
福島県全体で約1万人の児童生徒が自主的に県外に退去しているが、これら児童生徒は家族と離れ、転校に伴う不安に耐えており、保護者も経済的困窮やいつまで続くか分からない不安定な生活を強いられるなど、家庭全体が極めて大きなストレスを抱えていると言える。このような状態の解消が喫緊の課題であり、速やかに、児童生徒が県内に戻り、安心して学校に通わせることができるように図る必要がある。
このため、きめ細やかな測定に基づいた汚染マップを作成し、速やかに公表するとともに、分析と評価を行って住民への説明を十分に行い、それに基づいた子どもの生活環境の除染を行う必要がある。それでもなお線量が十分に低減しない地域においては、より低い線量の地域に学校を移し、家族やコミュニティーがそこに長期・短期に移って生活を再建できるようにするなど、地域の実情にあわせた形での対応をとるべきである。
また、詳細な汚染マップの作成等、これからの対策は、福島県外の必要な地域でも実施すべきである。

・また、汚染地域の子どもたちを夏冬の休暇に長期間保養地に送り線量低減とリフレッシュを図ったことは有効であった、との意見が多くあった。
線量低減とともに子どもを精神的に開放し、のびのびした環境で、体力、気力を育むサマーキャンプ等の措置について、期間の大幅な延長等の拡充を図り、実施すべきである。

参考 木村真三・獨協医科大学准教授の提言

木村准教授は、チェルノブイリ原発隣接地にあたるナロージチ地区でフィールド調査を続けてきていることから、今回のウクライナ出張でも現地に同行いただいた。また、同准教授は、福島においても事故後、地元自治体、住民、研究者と連携して独自に放射線汚染マップの作成や、地域でも除染活動を持ししており、このような経験を踏まえ、同准教授から以下の提案があった。

【提案その1】

放射線弱者である子どもたちの健康維持のため汚染されていない食品供給を行う。学校給食に関しては、文科省独自の基準値を導入し、食の安全を維持する。
ナロージチでは、事故当初の数年間は1日3食分の給食が子どもたちに振る舞われたことから日本でも同様の処置が望ましい。
また、全国の給食センターに食品汚染計を導入することが望ましい。

【提案その2】

チェルノブイリでは、甲状腺がんの上昇が始まったのが事故後4年経ってからである。チェルノブイリ汚染地域は、元来ヨウ素の乏しい地域であるため、放射性ヨウ素は甲状腺に取込まれ易かった。従って、一概には比較できないものの、日本でも甲状腺がんが上昇するかも知れない。また、ナロージチでは1人当たり2つ以上の病気を持つことが報告されていることから、日本でも多くの疾病に悩まされることになるかも知れない。
そこで、内部被ばくの調査および対応策を検討するためにチェルノブイリでの詳細な調査を早急に行う必要がある

【提案その3】

・避難地域の指定
年間被ばく線量(屋外8時間、屋内16時間として)5ミリシーベルト
・除染
毎時2~3マイクロシーベルト程度の住居地は除染可能
ただし、町内会レベルで全体に広く行う
・除染後の汚染物の仮置き場について
最少単位(町内会や集落)で仮置き場を決める



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